おから麹とシイラ魚醤:未利用資源が織りなす新時代の旨味
1. 研究の背景・目的:未利用資源に新たな価値を
OKARATは、持続可能な社会の実現と、食品の可能性を最大限に引き出すことを目指し、様々な食品素材の研究に取り組んでいます。今回ご紹介するのは、宮崎県衛生環境研究所、宮崎大学、宮崎県食品開発センターの研究チームによって発表された「おからを原料とした麹を用いたシイラ魚醤油の製造」に関する画期的な研究です。
この研究の背景には、二つの主要な未利用資源の課題がありました。一つは、宮崎県の夏の魚として全国有数の漁獲量を誇る「シイラ」です。しかし、シイラは品質保持期間が短く、市場価値が低いため、安価で取引されたり、多くが廃棄されてしまう現状がありました。もう一つは、豆腐製造の副産物である「おから」です。おからは高水分で腐敗しやすく、その多くが産業廃棄物として処分されてきました。
これら二つの低利用食品素材に新たな価値を与えるため、研究チームは、おからを麹の原料として活用し、付加価値の高い魚醤油を製造する可能性に着目しました。この「おから 研究」は、食品廃棄物の削減という環境課題と、新たな食品素材の開発という経済的・文化的価値創造の両面から、非常に重要な意味を持っています。
2. 研究方法の概要:麹菌とおからの可能性を探る
本研究では、以下の方法で「おから麹」を用いたシイラ魚醤油の製造を試み、その品質と風味を詳細に評価しました。
- 麹菌の種類:醤油醸造に一般的に用いられる、糖化力とプロテアーゼ力の高い「Aspergillus oryzae(アスペルギルス・オリゼ)」と、プロテアーゼ力の高い「Aspergillus sojae(アスペルギルス・ソヤエ)」の2種類を使用しました。
- 麹の原料:比較対象として一般的な「醤油麹(大豆・小麦)」に加え、本研究の主役である「おから麹」を使用しました。
- 魚肉の処理:シイラの魚肉は「生魚肉」と、不快臭の抑制を目的とした「蒸煮魚肉(30分間蒸煮)」の2種類で比較されました。
- 発酵条件:すべての試験区を25℃で6か月間発酵させました。
- 評価方法:製造された魚醤油は、全窒素分、エキス分、有機酸、アミノ酸、揮発性成分といった詳細な成分分析に加え、醤油官能検査員を含む9名による5点法の官能評価によって、その品質と風味特性が多角的に評価されました。
3. 主な研究結果:おから麹が引き出す新たな旨味の秘密
この研究により、おから麹が魚醤油の品質と風味に与える驚くべき「おから 効果」が明らかになりました。
- 高品質な魚醤油の実現:おから麹を使用することで、全窒素分2.01〜2.35%(こいくち醤油特級相当)、エキス分19〜21%という、高品質な魚醤油の基準を満たす数値が達成されました。これは、おからの豊富なタンパク質やその他の「おから 栄養」成分が、麹菌によって効率的に分解・変換されたことを示唆しています。
- 官能評価の向上:特に「蒸煮魚肉 + Aspergillus oryzae + おから麹」の組み合わせ(試験区OO-2)が、9名の官能評価員から最高の総合評価(5点法中2.3点)を獲得しました。この結果は、おから麹が魚醤油の風味を格段に向上させる可能性を示しています。
- 甘味・旨味成分の増加:おから麹を使用した魚醤油では、甘味系アミノ酸(グリシン、アラニン)と旨味系アミノ酸(グルタミン酸)が大幅に増加していることが判明しました。これらの甘味系・旨味系アミノ酸の合計量は、味の官能評価と非常に高い負の相関(R=0.87)を示しており、アミノ酸の増加が直接的に風味の向上に寄与していることが裏付けられました。これは、おからが持つ「おから 栄養」としてのポテンシャルが、発酵プロセスを通じて最大限に引き出された証拠と言えるでしょう。
- 有機酸(リンゴ酸)の生成:有機酸分析では、おから麹使用区でリンゴ酸が多く生成されることが確認されました。リンゴ酸は、フルーツのような爽やかな酸味や風味に寄与するとされており、官能評価との間にR=0.81という高い相関が認められました。これは麹菌の代謝由来であり、おから麹が単なる栄養源だけでなく、複雑な風味プロファイルの形成にも寄与していることを示しています。
- 不快臭の抑制:蒸煮処理を施した魚肉を使用することで、魚醤油特有の不快臭成分(イソ吉草酸、ジブトキシメタンなど)が大幅に減少することが明らかになりました。これにより、より洗練された風味の魚醤油が製造可能となります。
- おからの影響の大きさ:クラスター分析の結果、おからを原料とした試験区が高い類似度を示し、麹菌の種類よりも原料としてのおからの影響が大きいことが示唆されました。これは、おから自体が持つ特性が、最終製品の風味に決定的な役割を果たすことを意味します。
- 安全性と品質:乳酸を添加しなくても、すべての試験区で有機酸総量が500mg/100ml以上を達成し、十分な酸度と安定性を確保できることが示されました。
4. OKARATとしての考察:未来の食卓へ、おから麹の挑戦
この「おから 研究」は、OKARATが目指す「持続可能性」と「美味しさ」の追求に大きな示唆を与えてくれました。
まず、廃棄される運命にあったシイラとおからという二つの素材に、魚醤油という形で新たな高付加価値を与えることができる点は、食品ロス削減という現代社会の喫緊の課題に対し、具体的なソリューションを提供するものです。特に、おからが持つ豊富な「おから 栄養」成分が、魚醤油の旨味と風味を向上させる鍵となることが示されたのは、驚きであり、喜ばしい発見です。この「おから 効果」は、単なる廃棄物利用を超え、食品としての品質向上にも直結しています。
OKARATでは、この研究結果を基に、おから麹のさらなる可能性を追求していきます。例えば、魚醤油だけでなく、様々な調味料や食品素材への応用、さらに深いうま味と風味を持つ発酵食品の開発など、その応用範囲は無限大です。おから麹が引き出す甘味・旨味アミノ酸やリンゴ酸といった成分は、私たちの製品にこれまでにない深みと複雑さをもたらすでしょう。
私たちは、この研究が示す「おから 研究」の重要性を深く認識し、これからも未利用資源の活用を通じて、地球環境に優しく、かつ食卓を豊かにする製品開発に尽力してまいります。
5. まとめ:廃棄物から生まれる、旨味と持続可能性の循環
越智洋氏らの研究は、廃棄されがちなシイラと、豆腐副産物として処分されることが多いおからという二つの資源が、卓越した風味を持つ魚醤油として生まれ変わる可能性を明確に示しました。おからを麹の原料として活用することで、甘味系・旨味系アミノ酸やリンゴ酸が増加し、官能評価の高い魚醤油が製造できることが科学的に証明されたのです。
この成果は、廃棄物削減と原料コスト削減の両立を可能にし、持続可能な食品生産システムを構築する上で極めて重要です。OKARATは、この「おから 研究」の知見を活かし、おからが持つ無限のポテンシャルを最大限に引き出しながら、地球にも人にも優しい、新しい食の価値を創造し続けていきます。おからの「おから 栄養」と「おから 効果」が、これからの食文化に革新をもたらすことを確信しています。
6. 参照文献
本記事は以下の研究・論文を参考に作成しました。
- 越智洋、水谷政美、山本英樹、林幸男(2014)「おからを原料とした麹を用いたシイラ魚醤油の製造」日本食品保蔵科学会誌 VOL.40 NO.4