「おから」が調味料の常識を変える?魚醤油開発にみるその秘めたる「栄養」と「効果」
「おから」が調味料の常識を変える?魚醤油開発にみるその秘めたる「栄養」と「効果」
豆腐製造の過程で大量に排出される「おから」。その豊富な栄養価にもかかわらず、多くが廃棄されてしまう現状は、食料廃棄問題が叫ばれる現代において大きな課題です。
私たちOKARATは、この未利用資源であるおからに新たな価値を見出し、持続可能な食の未来を創造することを目指しています。本記事では、そんなおからの可能性を深く探る「おから 研究」の最前線として、おからを麹の原料として活用した魚醤油の開発に関する興味深い論文をご紹介します。
1. 研究の背景・目的:未利用資源が抱える二つの課題
本研究が着目したのは、日本が抱える二つの食料関連の課題です。
シイラの課題:漁獲されるも価値が不安定
宮崎県の夏の魚として知られるシイラ(マヒマヒ)は、全国有数の漁獲高を誇ります。しかし、その身は鮮度が落ちやすく、漁獲量が多い時期には安値で取引されたり、時には廃棄されたりすることもありました。漁業資源の有効活用は、水産業における長年の課題です。
おからの課題:高栄養ながら大量廃棄
一方、豆腐の製造過程で生じる副産物であるおからは、大豆とほぼ同等の豊富な栄養価(食物繊維、植物性タンパク質、イソフラボンなど)を持ちながら、年間約100万トンもの量が産業廃棄物として処分されています。これは、処理コストがかかるだけでなく、貴重な栄養源の損失でもあります。
これらの二つの未利用資源が抱える課題に対し、本研究は「おからを麹の原料として活用し、シイラ魚醤油を製造する」という画期的なアプローチを試みました。これは、廃棄物削減と食品バリューチェーンの循環利用、ひいては持続可能な社会への貢献を目指す、OKARATが理念とする方向性と完全に合致するものです。これまでの「おから 研究」では、おからを原料とした麹の製造は報告されていましたが、そのおから麹を用いて魚醤油を製造するという試みは、本研究が初めてでした。
2. 研究方法の概要:おから麹が拓く新しい調味料の世界
研究チームは、おからの持つ潜在能力を最大限に引き出すため、多角的なアプローチで魚醤油の製造を試みました。その主な研究方法は以下の通りです。
- 麹菌の選定: 糖化力とプロテアーゼ力(タンパク質分解能力)の高い2種類の麹菌、A. oryzaeとA. sojaeを使用しました。
- 麹原料の比較: 主役である「おから」を麹原料とする区と、一般的な醤油麹の原料である大豆・小麦を麹原料とする区を設け、その効果を比較しました。
- 魚肉処理方法: シイラの魚肉は、生の状態と蒸煮した状態の2種類で処理し、発酵への影響を評価しました。
これらの組み合わせにより、計8種類の試験区を設定。約6か月間という期間をかけてじっくりと発酵させました。発酵後は、一般成分、有機酸、アミノ酸、揮発性成分といった化学的な分析に加え、専門家による官能評価(香り、味、色など)を実施しました。
3. 主な研究結果:おから麹がもたらす風味と栄養の向上
徹底した分析の結果、おからを麹原料として使用することが、魚醤油の品質に非常にポジティブな影響を与えることが明らかになりました。
- 一般成分の向上: おからを麹原料に使用した魚醤油は、エキス分と窒素分が高くなる傾向が見られました。
- 有機酸の増加: おから麹を使用した試験区では、リンゴ酸の生成が確認され、有機酸総量が増加しました。リンゴ酸は、爽やかな酸味と複雑な風味を与える重要な成分です。
- アミノ酸の増加: おからを原料にした試験区で遊離アミノ酸量が著しく増加。特に、甘味系アミノ酸(グリシン、アラニン)と旨味系アミノ酸(グルタミン酸)が増加しました。
- 官能評価の高さ: 専門家による官能評価では、おから麹(A. oryzae)と蒸煮魚肉の組み合わせが最も高い評価を獲得しました。
- 多変量解析による相関: リンゴ酸、甘味系アミノ酸、旨味系アミノ酸の含有量が官能評価の高さと高い相関を示しました。
4. OKARATとしての考察:おからが拓く持続可能な食の未来
この「おから 研究」の結果は、私たちOKARATにとって非常に示唆に富むものでした。おからの「栄養」価値が、単に食物繊維が豊富というだけでなく、発酵プロセスを通じて味の深みや複雑さといった付加価値を生み出す力があることを示しています。
また、廃棄されてきたおからに、風味豊かで栄養価の高い調味料を生み出すという具体的な「効果」があることが証明されました。これは、食品ロス削減と資源循環型社会への貢献というOKARATの使命において、大きな一歩となります。
OKARATは、この研究結果を基に、おから麹のさらなる応用可能性を追求していきます。魚醤油だけでなく、他の発酵調味料へのおから麹の応用や、おからの栄養価を最大限に引き出した健康食品の開発などが考えられます。科学的根拠に基づいた研究開発を通じて、より美味しく、より健康で、より持続可能な食品の提供に挑戦し続けてまいります。
5. まとめ
本研究は、おからを麹原料として使用することで、魚醤油の窒素分、有機酸、甘味系・旨味系アミノ酸が増加し、官能評価の向上に大きく貢献することを明らかにしました。二つの未利用資源(おからとシイラ)が、高度な発酵技術を通じて風味豊かな魚醤油へと生まれ変わるこの成果は、おからの「栄養」と「効果」が製品品質に直結することを示す重要な知見です。
私たちOKARATは、これからもこのような研究を積極的に推進し、未利用資源の価値を最大限に引き出すことで、食の未来に貢献してまいります。
参照文献
本記事は以下の研究・論文を参考に作成しました。
- 越智 洋、水谷政美、山本英樹、林 幸男(2014)「オカラを原料とした麹を用いたシイラ魚醤油の製造」日本食品保蔵科学会誌 VOL.40 NO.4